女性特有のがん
子宮頸がん
子宮の下部にある腟とつながっている部分を子宮頸部と言いますが、SCジャンクションと呼ばれる部位があります。そこから発生するのが子宮頸がんです。原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV、性交渉によって感染するウイルス)が関係していると言われ、なかでも妊娠・出産回数が多い女性ほど発生しやすいと考えられています。ただHPVに感染したとしても多くの場合、無症状のうちに排除されています。ただHPVが排除されずに感染が持続している状態だと、一部に子宮頸がんの前がん病変や子宮頸がんが発生するようになります。現代では初めての性行体験が早い方で14才前後からです。その時に感染したHPVウイルスが丁度女性の出産年齢当たる30才台後半に子宮がんの発症のピークを作ります。子宮摘出手術を回避できない場合、妊娠出産は諦めねばならない悲劇的事態となります。これだけは避けねばなりません。
初期症状などは、ほとんどみられませんが、不正出血やおりもの、腰痛などがみられると進行している状態と考えられます。子宮頸がんは早期に発見することができれば、完全に治る病気ですので、症状が出る前に定期検診を受けてください。
HPVワクチンについて
子宮頸がんの予防法としてはワクチンがあります。現在大規模調査が実施されており、以前世間の話題となり中止になったHPVワクチンの「副反応」と呼ばれるものとは無関係であることが判明しております。堺市ではHPVワクチンは性交未体験の12才から3年間3回行い料金は無料です。世界では日本以外のほとんどの国が実施し子宮頸がんの発生を抑えるのに成功しています。
検査
当院は、堺市が実施している子宮がん検診の実施医療機関です。検査では、問診、視診のほか、子宮頸部の細胞診(がんの発生しやすい部分等の分泌物をブラシで採取し特殊液体に保存、細胞の異型性やHPVの有無を調べる)、堺市の子宮がん検診は無料(全額公費負担)ですので、20歳以上の女性で対象の方(基本は偶数年齢ごと2年に1回)は必ずご受診ください。
子宮体がん
子宮内膜の細胞が異常に増殖している状態が子宮体がんで、閉経後の女性に多く見受けられる疾患です。発症にはエストロゲンが関与しているとされ、エストロゲン(卵胞ホルモン)は子宮内膜細胞を増殖させることから、子宮内膜がんとも呼ばれています。ただこの細胞の増殖というのは、多くは排卵後に黄体ホルモンが卵巣から分泌されることで食い止めています。そのため、月経のある女性は、子宮体がんにはなりにくいと考えられています。
一方で子宮体がんの発症リスクが高いと言われているのが、閉経後の女性となるわけですが、そのほかにも肥満、高血圧、糖尿病、出産経験のない方などは注意が必要です。なお子宮体がんは発症しても、初期症状はとくになく、不正性器出血がみられます。閉経後あるいは更年期での不正出血がある場合は注意が必要です。また、閉経前であっても、月経不順、乳がんなどを患ったことがある方も要注意です。子宮体がんが進行して、骨盤内組織に浸潤するようになって初めて下腹部痛が現れるようになります。
検査
堺市で実施している子宮がん検診では、医師が必要と判断した場合に子宮体部の細胞診が行われます。これには加齢により子宮頸管が委縮し硬化しているため強い痛みを伴うため予め、細い棒状の器具を予め挿入して翌日に局所に麻酔して子宮の内部の細胞を採取します。細胞診を行った結果、陽性あるいは疑陽性と診断された場合は、精密検査として局所麻酔下で子宮内膜全域の組織を採取して組織検査することが必要となります。
乳がん
乳がんとは、乳房に発生する悪性腫瘍のひとつで、乳腺組織の一部の細胞の遺伝子が、様々な要因を積み重ねていくことで変異し、がん細胞となって増殖すると考えられています。多くは、小葉(乳汁をつくる組織)を出てすぐのところにある乳管(乳汁の通り道)の壁の細胞が異常増殖するといった形で発生します。これが乳管がんです。そのほかの乳がんとしては、小葉から発生する小葉がんがあります。この小葉がんの患者様は乳がん患者全体の5~10%ほどです。
なお乳がんは乳房にあるしこりで気づくことができます。早期の乳がんにはしこりはありませんが、5mm~1cmほどの大きさになれば、ご自分で触って確認することもできます。そのため、早期発見のためには自分で気づく自己検診法がとても大切です。しこりが気になるという方は、まず乳がん検診をお受けください。
検査
当院は堺市が実施する乳がん検診の実施医療機関です。当院での検査は、先ず問診、視・触診を行います。
ただし、視・触診でしこりなどの異常を医師が発見した場合は、精密検査を至急受けることになります。マンモグラフィ(乳房エックス線撮影)の検査は当院では行っておりませんので、検査が可能な堺市内10施設の中から、ご希望に沿ってご予約させていただきます。マンモグラフィによる検査も行います。
堺市の乳がん検診は堺市民の40歳以上の女性は無料(全額公費負担)です。(偶数年齢 2年に1回)是非検診にお越しください。
卵巣がん
卵巣に発生する悪性の腫瘍が卵巣がんです。このがんは、発生した場所から3つのタイプ(上皮、胚細胞、性索間質)に分類されますが、そのうちのおよそ90%以上が上皮性卵巣がんです。原因については完全に明らかになってはいませんが、家族に卵巣がん患者がいる、出産経験がない、子宮内膜症を発症したといった方などに発症リスクが高いと言われています。
卵巣がんは、初期の頃は自覚症状がほとんど現れないので発見するのは非常に困難です。そのため、ある程度がんが進行してから現れる症状、具体的には、腹部の膨満感、下腹部の痛みや圧迫感、下腹部にかたいものが触れたといったことで気づくことが多いようです。腫瘍がさらに大きくなると、骨盤内のほかの臓器を圧迫して、下腹痛、腰痛、便秘、排尿のトラブルなどを引き起こします。また、病変の進み具合によっては腹水が溜まることもあります。
年齢的には50歳前後が最も多く、次に80歳前後の世代が多いのですが、20~30代の女性でも卵巣がんに罹ることがあります。気づきにくい病気ですので、定期的に検診を受けるようにしてください。
検査
当院では、子宮頸がん定期検査の際を利用して、経膣超音波検査(エコー検査)で卵巣に異常を認めた場合、合わせて腫瘍マーカー(HE4・CA125)など精度の高い血液検査を行います。これは通常の採血で簡単に測定結果が得られます。結果が正常範囲を超えた場合にはMRI検査で良性、悪性の判定し手術の適応か否かを診断します。